Takeo Kamiya, architect
ISLAM no KENCHIKU-BUNKA
( Architecture de l'Islam )

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Written by Henri Stierlin, Translated by Takeo Kamiya
1987, 28cm- 290pp, 22,000 Yen
Paperback edition, 1990, 9,800 Yen
ISBN4-562-02127-6, Pubsished by Hara Shobou, Tokyo

The book shows the History of Architecture and its characteristics
of each regions of Islamic world on the basis of cultural context.
It is full of beutiful colour photographs taken by the auther
and new drawings. Ch. 1 : Substrata of the Islam civilisation,
Ch. 2 : Architecture of Classical period, Ch. 3 : Originality
of Persia, Ch. 4 : Mediterranean Islam especially Cairo, Ch. 5 :
Seljuk and Ottoman Turkey, Ch. 6 : Architecture of Islamic India



BOOK REVIEW by YASUFUMI KIJIMA

This is probably the first book that is available in Japanese about the whole history of Islamic architecture. Usually Islamic architecture is introduced in books of fine arts, and always explained in a historical context. There are very few published works of Islamic arts and architecture in Japan. Therefore Japanese people know little about physical aspects of the Islamic world.

This single volume book covers almost all the Islamic world and its entire history. In contrast to the other big volumes such as Fine Arts Series, this has many examples in beautiful color prints and shows many precise drawings in scale.

The most important point is that the author, Stierlin, clarifies the feature of Islamic architecture from a new point of view. It is a concept of 'space,' which is understood as a functional space in the buildings. He doesn’t focus on the stylistic analysis of expression. Scholars of esthetics explain from a viewpoint of expression. Functionalism in architecture was developed after the World War I, and it got the international agreement. But new nationalistic ideas opposing to international thinking have recently been raised, but on the contrary the aim of identification of different types of Islamic architecture in various countries is understood by the spatial idea.

The concept of space can categorize the architecture in several phases, and at the same time it makes new groups between the different epochs. Stierlin mentions several common rules and elements, and techniques of composition. According to this opinion, Islamic architecture is composed of many classical and Christian building elements but the final appearance is completely Islam. Moreover it makes it easy to distinguish the urban buildings from the monumental architecture.

We need a new history of architecture in addition to that of monuments such as religious building and palaces. We must consider the vernacular architecture as well as rural buildings. This book clarifies these necessities. The translation into Japanese is quite good, and the arrangement of the pictures and drawings are as perfect as the original edition.

P.186 Chapitre 4 : L'ISLAM MEDITERRANEEN, Photos: Palais de l'Alhambra____P.258 Chapitre 6 : L'ARCHITECTURE DE L'INDE ISLAMIQUE
Page Sample



From AFTERWORD by the TRANSLATOR

"Kenchiku" という言葉は, 本来 Architecture の訳語であるが, 我が国では, もともとの芸術上, 文化上の概念としての原義から外れて, 物理的な "building" や工学的な "construction" と同意義に使われてきてしまった. Henri Stierlin が著した本書は, islam 社会における建設技術を解説した書物ではないし, 各国の有名な建物の案内書でもない. Architecture が, 人類の精神の営みとしての高度な文化であり, 芸術であることを, islam 圏の建築の歴史を通して語っている書物である.

「芸術の研究をするということが, その歴史の主人公であるところの, 過去および現在の人間存在を, よりよく理解する手段でないとしたら, どんな意味があるだろうか」 とは, 本書の序文の一節であるが, そうした書物がなかったわけではない. しかしそれらは, もっぱら西洋建築について書かれてきたのであって, Europe 以外の建築については, あるいは建設技術的に, あるいは異国趣味的にしか, 語られてこなかったのではないだろうか. 本書は, 今まで我々が等閑視してきた islam 圏の建築について, 多くのことを教えてくれるが, それ以上に, 建築というものがいかに深く人類の歴史と関わり, 人間の夢や希望を表現してきたか, ということを教えてくるれるだろう.

著者の Henri Stierlin は, 1928年生れの architectural historian in Switzeland であるが, 文献学的な academism の学者ではない. university では古典語と法律を学び, 建築雑誌の編集や, 建築に関する放送番組の制作に携わったという. 彼の名前を高からしめたのは, 60年代の "Architecture Universelle" の出版企画であった. これは国際出版で, 日本でも, 美術出版社から邦訳が出版されたので, 記憶されている方も多いだろう. Henri stierlin はこの企画の中心となったばかりでなく, series の最初に出版された "Maya", "Ancient Mexico", それに翻訳されていない "Angkor" を, 自ら執筆し, それらの巻の美しい写真も, 自身が撮影しているのである.

これらの題名を目にするだけでわかるように, 彼の興味の中心は, 絶えず第三世界に向けられていた. この企画事態が, 当時としては十分に人々を驚かせるに足るもので, European "Gothic" or "Baroque" にも各 1巻を与えているが, "Maya", "Ottoman Turkey" or "Islamic India" にも 1巻を与えようというものだった. つまり, それまで支配的だった西洋建築中心思想を一挙に取り払い, 世界中のあらゆる建築文化を, 等価のものとして並列しようとしたのである.

ここには明らかに, それまでの建築史家とは異なった視点がある. 地理的に局限された建築文化の単線的な歴史が, (Europe を中心に) 研究されていた時代は過去のものとなりつつあった. 大戦後の交通手段や情報技術の大幅な進歩によって, 人々は自在に世界をかけめぐるようになった以上, 建築史は比較文化的に, 語られ得るようになったのである.

惜しいことに, この series は完結することなく終わってしまったが, そうした姿勢を彼は持ち続けて, 以後もたえず世界中の建築文化を調べ, 写真を撮り, drawings を起こし, 精力的な出版活動を展開してきた. 「世界の建築」 series の未完だったものも含めて), drawings ばかりを集めて出版したのが, 邦訳もある 「図集・世界の建築」 2vols. である.

他の著作としては, その後の研究成果をとりいれた大型本 "Art of Maya", "Art of Azteka" and "Art of Inka" の 3部作. 「イラン」, 「イスファハーン」, 「ムガル朝のインド」, Great civilizations series の "The Cultural History of the Arabs" その他. 最近では "La Demarsh des Batisseurs" という series を企画し, "Hadrien et l'Architecture Romaine" and "Soliman et l'Architecture Ottomane" を出版している.

これらはすべて, Office du Livre in switzeland から出版しているが, 英訳, 独訳の出ているものも少なくない. 全体を貫く特徴は, 自身の撮影した colour photographs と, 新たに作図された drawings, それに大胆な切り口の本文が密接にからみあって, 理解しやすい内容, 美しい造本となっていることである. こうした著作活動によって, 1972年にパリの建築アカデミーから, 金メダルを授与されている.

これだけの著作群に対して, 邦訳は少なく淋しいことであるが, 本書の刊行によって, architectural historian というよりは文明史家に近い, Henri Stierlin の真面目が, 我が国でも十分に評価されるのではないかと思う.


次に, 建築史書としての本書の特色を述べておきたい. 通常の 「建築史」 の書物と比べるなら, 本書は少々型破りである. 建築史上の有名な建築作品を, 平等主義的にまんべんなく取り上げて, 順次解説したような, 「教科書風」 な記述とは, まるで違っている. ここではきっぱりと不平等主義を貫き, 重要な作品には多くの page数を振り当てるかわりに, それほどと思われない地域や時代は, ばっさりと切って捨てている. Central Asia やマグレブの Isamamic architecture が, ほんの数ページしか扱われていないのに対して, Isfahan の Great mosque of the Shah は, これ一つの作品のために, 12ページも費やしているのである.

著者の建築に対する興味の持ち方は, 歴史家的であるよりは, ずっと建築家的であるように見える. 訳者自身が建築家であることから言えば, 私たち建築家が建築の歴史を学ぶのは, 個々の建物に関する網羅的な知識を得たいわけではなく, 歴史の上で傑出した建築作品や, あるいは一つの時代を貫く様式といったものが, 何故そうした形態をとるに至ったのか, を知るためなのである. それに対して, 通常の教科書的「建築史」の書物は, やや無味乾燥で退屈なものが多く, 本当に知りたいことを教えてはくれない.

本書においては, たとえば上記の Great mosque of the Shah は, さまざまな面から証明が当てられて, その原理や意味性が探求されるが, とりわけその造形や中庭の比例関係が, シーア派の神秘思想と, 深く結びついていることを知らされて, 目をみはる思いがする. あるいは Damascus の大 mosque が, 何故あのような不思議な plan and space を得たのかを, 大胆な仮説を交えて, 9pages にわたって解明している部分は圧巻である. さらに, Seljuk Turkey の caravanserai の建築が, Armenian architecture , ひいては Europe の romanesque architecture と, 密接な関連を持っていることを読めば, 国家の興亡に伴う文化の興隆と影響関係の壮大さに, 深く思いを致さざるを得ない.

こうして, 常に写真と図面に助けられながら, その広大で多様な Islamic Architecture の歴史を通して, islamic culture というものが, どれほど豊かで奥深いものかを, 知ることができるのである.

それにしても, 時代的にも地理的にも, あれほど広範な islam 圏の建築文化の全体像と本質が, 文明史の流れに沿って, これほど的確に一書の内に記述されているのは, みごとと言うほかはない. 本書によって, 一人でも多くの方が Islam の建築文化に興味を持たれ, そして islam 諸国に旅して, その華麗な architectural heritage の数々を, 直接眼のあたりにして来られることを, 心から願うものである.



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