Takeo Kamiya, architect
RAKUEN no DESIGN
( Gardens of Paradise )
The History and Design of the Great Islamic Gardens

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Written by John Brookes, Translated by Takeo Kamiya
1989, size: 22cm -280pp, Price: 5500 Yen
ISBN 4-306-09310-7, Published by Kajima Shuppan, Tokyo
Telephone : 03-5561-2550, Facsimile : 03-3595-2561

Beginning with the gardens of Middle East befor Islam,
the book follows the History of "Bagh" (garden) in the Islamic world.
Describing examples in Spain, Persia and India mainly,
it makes the Islamic consept of "Paradise Garden" clear.
A lot of photgraphs and drwaings are useful for understanding.



< from AFTERWORD by the TRANSLATOR >

古代 Persia では, 壁や塀で "enclosed garden" のことを, "Pairidaêza" と呼んだ. ――なぜ壁や塀で囲ったのか. 中東地域はその大部分が砂漠的風土に属し, 灼熱の陽ざしと砂ぼこり, 延々と続く荒蕪地や砂漠, といったもので構成される "Nature" そのものは, 人間を優しく包み込むものではなく, むしろ敵対するものであった.
それだから, 人々が快適な環境を得ようと思うなら, 周囲の nature から隔離され, 保護された 「避難所」 を作らねばならなかったのである. 熱風や砂塵, 陽ざしや獣をさえぎるべく, 壁や塀で囲いとられ, 涼しい日陰と水をたっぷり備えた場所, それが中東の人々にとっての庭園であり, 英語の "Paradise" の語源となった, Pairidaêza なのであった.

この "Paradise" の概念は, 7世紀に中東に起こった Islam に受けつがれ, Muhammad は "Quran" の中で, 選ばれた者に約束された来世の paradise について, 繰り返し語っている. 来世の(天上の) paradise の image のもとになったのは, この Pairidaêza であり, そしてこの paradise の image を現実のものとしようとした, "Paradise Garden" こそが Islam 庭園の理念であり理想であった.

この "gardens as paradise", すなわち 「地上の paradise」 を実現しようとした王侯や庶民, 造園家や建築家たちの営為の歴史が, Islam 庭園の歴史であり, 現代のランドスケープ・デザイナーである John Brookes が本書で描こうとし, そして見事に成し遂げたところの世界である.

本書は John Brookes : GARDENS OF PARADISE, The History and Design of the Great Islamic Gardens, 1987, Widenfeld and Nicolson, London の全訳である. 著者の John Brookes は, 英国の第一線で活躍する landscape designer であり, 世界をまたにかけているが, その本拠はウェスト・サセックスに置いて, 自ら造園の学校も開いているとのことである. また実務家であるばかりでなく, 学級肌の人でもあって, 既に著作が 10冊ほどある. その主なものとしては, "Room Outside", "Garden Design and Layout", "The Small Garden", "The Garden Book", "A Place in the Country", "The Indoor Garden Book" 等がある.

1978年から 79年にかけて, ちょうど革命をはさむ 2年間, Iran に滞在してテヘランの School of Design で, landscape design を教えたことが, 本書を著すきっかけとなったらしい. その他の Islam 地域の庭園も調査し, 歴史的文献にも広く眼を通しているが, 歴史的な記述だけでなく, 現代の Islam 庭園の問題をも深く論じ, 更に Islam 諸国で造園を行う人に対する, advice までも添えているところは, 現役の造園家ならではのことと言えよう.

ただし, もともと文筆家ではないので, その文体は必ずしも整然としたものとは言えないので, 直訳調ではわかりにくい訳文となってしまうことを恐れ, その意味をくみとりながら, 極力論理的な文脈の文章となるよう, 翻訳を心がけた. しかしそのために, 原文のもつポエジーがそこなわれてしまったとすれば, 著者に対して申し訳ない気もする.

訳者にとって本書は, 前回訳出した, "Architecture de l'Islam" (written by Henri Stierlin, Hara Shobo, 1987) の姉妹編というべきものである. 日本の建築界が明治以後ひたすら欧米の建築に学び, 追いついてきた現在もなお欧米にばかり顔を向けていて, India や Islam, その他第三世界の建築文化を無視している状態の, 改善に少しでも役立てばと, 一介の architect の身でありながら, history of Islamic architecture の書物を翻訳し, 出版にこぎつけたのが "Architecture de l'Islam" であった.

幸い好意的な評価を受けることができたので, 更に不遜にも, 今度は<イスラムの庭園文化>の書物までも, 翻訳出版する役割を担うこととなった. 著者のブルックス氏が英国人であるにもかかわらず, かつての Europeans のような 「文化的帝国主義者」 としてではなく, 謙虚に Islam の庭園文化に学ぼうとしている姿勢に, 共感をしたからである.

イスラムの人々にとってその環境を形成する三大要素は, 都市と建築と庭園であろう. 我が国の Islam 関係の研究者たちが総力をあげて, 「イスラムの都市性」 という大がかりな合同研究を進めている現在, それを補完するように, Islam の建築文化と庭園文化の本を出版することができたのは, 時宜にかなったことと言えるのではないかと思う.

さて周知のように, 我が国は諸外国に比べて, 都市内の人口当たりの公園面積が極端に小さい. ストレスの多い現代にあって, これからの都市開発は商業施設ばかりでなく, むしろ公園の整備拡大にこそ意を用いねばならない. その時に, 日本庭園の方法や西洋庭園の方法と並んで, イスラム庭園の方法もまた, 大いに参考にすべきではないかと思われる. そしてまた, ますます過密化する都会生活において, イスラムの 「囲われた庭園」, パラダイス・ガーデンの考え方は, これからの住宅の庭に対しても示唆するところ大きい. 我が国における新たな人間環境を作って行く上で, 本書が多少とも役立つならば幸いである.


P.88-89 Chapter 4 : PERSIA, Timurid Empire (Photo: Courtyard of Sayyid Shah Nimatullah)
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< BOOK REVIEW on YOMIURI SHINBUN >

建築物だけでなく造景や造園も, その時代その社会の人々の, 「心のかたち」 と切り離して眺めることはできない. それはちょうど服装というものが, 個人の趣味だけでなく, 時代の流行にどうしても制約されてしまうことと似ている. 本書は風土や生活様式を念頭に置きながら, Islam 地域の garden の design に焦点をあて, その理念を具象的に探ろうとしている.

Paradise という英語は, Ancient Persia の, "Enclosed Garden" (Pairidaêza) に由来するというから, Islamic garden にはもともと, "paradise on earth" を実現しようとする願いがこめられていたといえる.

偶像崇拝を厳禁したIslam 世界では, 人間をふくめ生きとし生けるものの姿を, 石の上に描くことはできなかった. そのかわり, European Wold には類を見ないような抽象度の高い幾何学模様が, architectural design における美的表現として発達した. 本書の特色は history of architecture において, 従来あまり注目されなかった Islam の造景と造園を, 正面から本格的に取り上げた点であろう. それは buildings で仕切られることによって, はじめて生み出される不思議な space なのである.

砂漠世界で希少価値をもつ植物の位置, 壁で囲むことの意味, 水利技術との関係, 園亭, 柱廊や回廊の構造とリズム, こうした点を, Persia, Spain, India, Egypt, Sicily, Turkey, そして現代の Islam 諸国に足をはこび読み解いてゆく. 歴史書としても十分読みごたえがあるだけでなく, 説明がおしつけがましくないのがいい. 著者自身が造園家でもあるためだろう.

ページを繰っていると, 十字軍時代の christians の驚きが伝わってくるようだ. Europeans は当時のサラセン文化の洗練された高度さを発見し, Europe が半野蛮状態にあることを知らされた. 西欧以外のところに, ひとつの自己完結的な文明が存在することを, 視覚的に学べる意味でも大変良い本だ.


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